■科学未来館・毛利衛館長と会談■
:お台場・日本科学未来館にて
2004年7月27日

| 宇宙飛行士毛利衛さん(現・日本科学未来館館長)と航空宇宙・ナノテクノロジー・情報通信・バイオなどのこれからの日本の科学技術振興政策について、約2時間にわたり会談しました。 |
|
科学未来館のメインは「人」 宇佐美 毛利館長 そのための重要なコンセプトは「人」です。 日本全国には科学館と呼ばれる施設は沢山ありますが、残念ながら既存の科学館自体に活気がないところが多いのが現状です。多くの科学館が「物」に重点を置きすぎているのではないかと思うのですね。例えば新技術の製品や新素材をただ展示してもそれは、技術発達の流れに取り残されてすぐに陳腐化してしまいます。そのようにならないためにも、ただ物を見せるのではなく、そこに「人」を介入させようと考えました。そうすればたとえ物が古くても「今はこうなっています。ここまで進んでいます」と伝えることが出来ます。「スタッフも展示の一つである」という考え方ですね。例えば、理工系大学生卒業者を中心に50人〜60人招いて、1年ごとの契約で最大5年間スタッフとして働いてもらうインタープリター(技術の通訳者)という制度を取り入れています。彼ら自身がここで育って社会に出て活躍するためのステップとして利用できる一方で、来場される方々には最先端科学技術と「話し」が出来る訳です。少しでも若者が科学技術に興味を持つきっかけとしてお手伝い出来ればと思っています。 「科学館の枠を超えた人材育成機関」 宇佐美 毛利館長 宇佐美 毛利館長 「求められる明確な国家の科学技術政策」 宇佐美 毛利館長 まずは航空宇宙についてですが、日本独自にやれるものと他国と協力すべきものと2つに分けて考えることが必要だと思います。例えば有人宇宙飛行なんかは、国際宇宙ステーション等で他国と協力して行うべきですね。単独で行うには、資金的な面のほか、どうしても、スペースシャトルの事故のように生死を伴うリスクとそれを乗り越えるパワーが必要になってきます。正直なところ日本では難しいかなと思ってしまいますね。ただこのようなの制約の中でもある分野ではキーを握ることも十分可能です。例えばNASAの映像技術なんかは日本独自のハイビジョン技術を採用してますし。NASAで使われているIBM製ノートパソコンは日本国内の工場で作られています。日本単独での航空宇宙開発としては無人飛行ですね。これはH-2ロケットで打ち上げられる人工衛星に代表されるように世界のトップレベルを走っています。日本独自にやれるものと他国と協力すべきものどちらにも言えることですが、将来の日本にはこの技術とこの技術が必要だ。といった長期的なビジョンを持って行うことが必要ですね。 ゲノムについては、人間の生命に関わる非常に重要な価値をもつ分野ですから日本独自にどんどん進めていきたいですね。ただここで考えなければならない点は、クローン技術や遺伝子操作といった事柄も含みますから、科学技術の観点からではだけでなく、文化観、宗教観の問題も関わってきます。一般的にですが、キリスト教的思考が根底にあるヨーロッパ諸国なんかは慎重な考え方ですが、逆にアジア諸国はこの問題にフレキシブルに考えている。日本はどうするべきか。個人的にはその中間くらいなのかなと思いますが、いずれにせよ独自のガイドラインを作る必要がありますね。 ナノテクノロジーは日本が得意とする分野といっていいですね。これは産業と結びつきも強いですし、現在でも世界のトップレベルを走っていると思います。 この三点の他に挙げるとすれば、基礎研究をもっと大事にして欲しいですね。例えばニュートリノの研究もそうですが、基礎研究というのは「何年後にこれだけの結果がだせる」と予測しにくいんですね。どうしても国主体の研究では、ある程度結果の読める応用研究に予算が割かれる傾向にあります。一人の研究者のアイデアが上手くいくかもしれないし、上手くいかないかもしれない、という研究がもっと見直されたらいいですね。これは50年後の日本の国力に関わってくることだと思います。 宇佐美 毛利館長 宇佐美 |
